おじいちゃんの思い出。

  • 2019.08.29 Thursday
  • 13:11

 

 

おじいちゃんはメガネをかけている。

もともと目が大きいのにメガネのせいで目がギョロリと光っている。

 

おじいちゃんはお母さんのお父さんだ。

お母さんは働いているので、学校が終わるとぼくはおじいちゃんの家へ向かう。

今日は算数のテストが返ってきて、ぼくは元気を吸い取られたみたいに、うつむき加減に歩いてきた。

 

「ただいま。」

「ああ、お帰り。」

おじいちゃんは新聞を広げたまま、ぼくの方をギョロリと見た。

 

「元気ないな。どうした?」

「うん。」

「さては算数のテストだな。」

「え!なんでわかったの?」

「ちゃあんと顔に書いてあるさ。」

おじいちゃんの目は何でもお見通しだ。

 

「お母さんに会いたくないな。」

ぼくはぽつりとつぶやいた。

おじいちゃんはワハハと笑って言う。

「気にするな。テストの点が悪いからって、死んでしまうでもなし。」

「そうだけど。」

 

おじいちゃんはあんぱんとコーヒーをふたり分、用意してくれた。

おじいちゃんはパンと言えばいつもあんぱんなのだ。

あんぱんが好きなのは日本人らしいからだと、得意げになって、ほおばっている。

ぼくは、よくわからないなりに、日本人でよかった、と思うのに、

算数のテストがない国があったら、そこに生まれたかったとつくづく思う。

 

「いいもの、見せてやろう。」

おじいちゃんは、ぼくにギョロ目で目くばせして、古い本だなの中から大きな箱を取り出した。

 

お母さんの名前が書いてある大きなテスト用紙。

そこには、大きなバツがいくつもついた10点の赤い文字が書いてある。

ひとつやふたつじゃなく、10点やら8点やら6点やらのテストばかりが出てくる。

ぼくは笑った。

おじいちゃんも笑った。

 

「でもな。」

おじいちゃんはお母さんの卒業文集を取り出した。

「私の夢」と書いてある。

小学校六年生の作文だから、四年生のぼくには読めない漢字も混じっているけど、おじいちゃんといっしょに読んでみた。

 

「私の夢。それは、頭のいい子を育てることです。」

とんでもない!とぼくは思った。

「私はテストが嫌いです。一枚の紙きれで、まるで私がポンコツのロボットみたいに評価されるからです。でも、頭の良さはテスト用紙だけではわかりません。私は大きくなったら、テスト用紙よりも正確に、私の将来の子どもを評価したいです。きっと、かしこい子どもを育てているでしょう。」

 

おじいちゃんのギョロ目が優しくなった。

 

お母さんにこの作文を、テスト用紙を見せる前に見せよう。

そしてぼくは言うんだ。

 

ーーーお母さんがかしこい人で良かったーーーってね。

 

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